MENU

フランス第3次ロックダウン、説明の試み。 Confinés dehors !

カフカイヤン(kafkaïen)…  フランス語にふれたことのある者なら一度は聞いた可能性の高い形容詞。日本語にすると「カフカ的な」となるのだろうが、その使用頻度と認知度は日本とは比較にならないほどフランス言語に浸透した言葉である。この「カフカイヤン!」を、この週末何度聞いたことだろう。

「理解不能」「不条理」「シュール」なシチュエーションを指すこの言葉は、カフカ文学にみられるように主に官僚主義(bureaucratie)を揶揄したタームで、「お役所仕事」が生み出す荒唐無稽な状況を指す時に好んで用いられる。今回フランス政府が取った対コロナ措置にうってつけのこの形容詞が、週末を通して新聞/テレビで雨あられのように使われた。

フランスでは先週末より、パリを含む北仏15県と南仏1県で、3度目となる新たな「外出制限」が敷かれた。まず槍玉に上ったのが緊急に用意された外出許可証。過去2回、全国的にロックダウンされた際にも存在したお馴染みのルールで、今回も許可証の義務付け自体が問題となるはずではなかった。

しかし今回は、日中の外出可能時間は無制限と決められ、外出目的も犬の散歩から買い物、運動、気晴らし、通学、通勤、通院、教会通い、デモ参加… まで多岐に渡ることから、許可証を携帯する必要性自体がまず疑問視された。

それでも政府はA4用紙2ページに渡る、あらゆるケースを想定した注釈だらけの「許可証」を生み出した。それを外出の度に印刷し、該当理由にチェックをしたうえ、名前、住所、生年月日、出生地、日付、外出開始時間、サインをした上で持ち歩かないとダメだという。

「カフカイヤン」を地で行くこの「許可証」は発行と同時に非難と嘲笑の対象となり、数時間後に当局が許可証の廃止を発表するという、政府にとっては屈辱的自体に至ってしまった。

そもそもこの「外出制限」措置の目的がはっきりしない。当然、コロナ感染率の急上昇に伴う「ロックダウン」措置なのだが、このように「」カギ括弧の使用をせまられるほど、今回の措置は形容しづらい。

実際、マクロン大統領を始め、政府メンバーも Confinement(封じ込め、ロックダウン)という言葉を頑なに使わない。マクロン大統領は『感染に歯止めをかける措置』と呼び、カステックス首相は『第3の選択肢 la troisième voie』などど述べている。

国のトップからしてこの有様なので、そのメッセージを受ける国民はさらに「???」で、先週木曜日にこの「?」な措置が発表されてから、この謎の措置を巡ってメディア上では議論が絶えない。ルモンド紙が今回の「??」ぶりを描いた記事でアルベール・カミュの名言をもじって表現しているように、正に「物事を下手に命名することは混乱を増長する à mal nommer les choses, on ajoute à la confusion」。

政府メンバーの発言を総括して理解してみた限りでは「国民を自宅に閉じ込めるのは色んな意味で得策ではないため逆に外に出やすくする対策を練った」ということらしい。Enfermer dehors[外に閉じ込める]とは、まさに苦肉の策。

政府の葛藤はもちろん誰しもが理解できるものである。しかし国民にとっては、ここ2週間ずっと「いよいよ閉じ込めるぞ~」とプレッシャーをかけられたあげく、結局ロックダウン前と大差ないミニ対策が決められた形だ。

「軽いロックダウン」により国民の不満を最小限に食い止めようとの狙いがあるのだろうが、ロシアンルーレットに似たこの作戦は、ただでさえ神経衰弱気味のフランス人には結構キツい。

こんな中途半端な措置で大丈夫か?いつまで続くのか?と不安や不満が増す逆効果ともなりかねず、外出許可証の失敗に加え、国民の信頼獲得にはつながらない可能性が高い。現に、直近の調査では、マクロン大統領の人気度は4ポイント下がっている

今回の「外出制限」では、お散歩で移動できる範囲のみが家から半径10 km 圏内に限られたことから、今後はこの「10 km 効果」に期待するしかなさそうだ。

シェアする
目次
閉じる