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コロナ禍でスター誕生、政府を出し抜く青年データサイエンティスト。La star française de l’ère Covid

今、フランスでは1人の青年に注目が集まっている。25歳のデータサイエンティストで、その名はギヨーム・ロジエ(Guillaume Rozier。昨年、コロナ禍が始まって以来、全国にコロナ情報をわかり易く伝えようと、政府が公開するオープンデータから感染者数や入院者数などを拾い、分かりやすくグラフ化などして、今では名を知らぬ者のいないポータルサイト CovidTracker で連日情報発信している。

1年前からSNS では密かに崇められている人物で、新聞記者はもとより、政府関係者も多く陰ながら彼をフォローしている。彼の周りには自ずと有能なIT データ専門家が集まり、彼の呼びかけに応じてボランティアで手を貸している様子。

知る人ぞ知るこの青年に一気にスポットライトが当たったのが1ヶ月前。コロナワクチン接種予約システムの効率の悪さに業を煮やす声に応え、彼のチームが効率的な予約プラットフォームViteMaDose(接種を早く!)をチャチャッと作り上げたのだ。ちなみに、ロゴなどもSNSで公募し、投票により決めるなど、参加型のプロセスも彼の人となりを示している。(かくいう筆者も投票に参加し、歴史的瞬間に立ち合った気分~)

これまでは、政府のポータルサイトから接種会場1つ1つクリックして空き枠があるかどうかを確認しなければならず、稀に空きが見つかってもそこから間髪入れずにオンライン予約作業となり、接種対象となる年配者にはハードルが高すぎた。それを、この青年は、空き枠のある近隣の接種会場を一気に抽出し表示できる予約プラットフォームをほぼ一晩で作り上げ、その後携帯用のアプリまで用意した。すべて、一切の広告・収入なしの完全ボランティアで。

一番喜んだのが、インターネットに不慣れな高齢者である親の予約を担当する若者/中年たち。以前、この記事に書いたようにワクチン予約までの道は険しい。政府の用意した手段では電話にしろネットにしろ、とにかく時間と根気が必要で苦戦していたところ、便利なツールが降って湧いたわけだ。

それ以来、ツイッターには「メルシー、ギヨーム!やっと親の予約が取れたよ!」という感謝メッセージの雨あられ。手柄を独り占めせず、チームのおかげだよ、と答える彼。当然メディアも注目し、テレビ出演やインタビューも一気に増えた。海外メディアからも注目され、2週間ほど前にはニューヨーク・タイムズ紙、最近では英誌エコノミスト(The Economist)もこの現象を取り上げた

インタビューに答えるガブリエル・アタル政府報道官。若い市民たちの取り組みは良いことだと認める。

このような取り組みは彼のチームだけではない。その日のうちに接種しきれなかった余りワクチンの待機リストを作り、会場と希望者をマッチングさせる医師ボランティアによるポータルサイト Covidliste や、大学教授でデータサイエンティストの Germain Forestier のサイトなど、注目される取り組みは他にも存在している。

と、これはこれで素晴らしい話なのだが、裏を返すと「政府&行政、何やってんの?」。偏差値トップの(高給!)官僚を大勢抱えながら、市民パワーが待ったなしで行政の不甲斐なさを穴埋めしていっている状況。この現状は、ある意味残酷でさえある。

その証拠に、未だ政府関係者から ViteMaDose サイトの積極的な紹介もなければ推奨もない。一昨日、インタビュー番組で、32歳のアタル政府報道官が、ワクチン接種体制の効率の悪さを問われ「ViteMaDose や Covidliste のような便利なサイトも存在する」と、ようやくポジティブに言及した程度。(インタビュアーからはすかさず「これらのサイトは政府の欠陥を補っている形ですけどね」とツッコまれていたけど)

残念。意地を捨て、とっとと提携して公式のコロナアプリ TousAntiCovid にでも組み込めば、伸び悩んでいるダウンロード数も増えるだろうに。大統領以下若々しいメンバーが揃う政府なのに、深く根ざした官僚体制はそう安々とは崩せない、ということか。

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