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警官の市民に対する暴力映像、その背景

マスク不着用を理由に、警察官が3人がかりで無防備な一市民を殴る蹴る。こんなショッキングな映像が、昨日の朝からソーシャルメディアやテレビで絶え間なく流れている。

この動画はインターネットプレスのLoopsiderが配信し、現時点で閲覧数1300万回。

ジャーナリストはじめ知識人、一般ツイッターも次々にこの動画をコメント&リツイート。インタビュー番組では内務に関係のない与党メンバーも問い詰められている。

そもそも内容の酷さが問題であることは理解できるが、この動画がここまで大きな騒ぎとなっている背景には一連の流れがある。

「グローバルセキュリティ法案」というタームがメディアで話題になり始めたのは11月に入ってすぐの頃。国の治安政策を補強する目的をもつ法案であるが、とりわけ法案の第24条が槍玉に挙がっている。職務執行中の警官を撮影した場合に、その映像の配信・流布に制限をかける条項だ。この制限に対して報道各社がこぞって反意を表明。「表現の自由」はもとより「報道の自由」が大きく侵害されるとしてメディアを通しこの法案がはらむ「危険性」を報じ、政府に警告を出し始めた。 

11/21
先週土曜日、ロックダウン中にもかかわらず、国民議会(下院)で審議中のグローバルセキュリティ法案に抗議するため全国で22000人が街頭でデモ 。

11/23
週明けの月曜日、全国ジャーナリスト労組(SNJ)がダルマナン内相を訪問するも「話にならない」と、首相との話し合いを要求し席を蹴った。

同日夜、パリのレピュブリック広場で警官が移民のテント500張を荒々しく撤去。状況を取材中のジャーナリストにも暴行を加える。この夜の状況も、警官の暴力を録画したツイッター動画を発端に物議をかもすことになる。

11/24
翌日火曜日、法案を提案した与党内にも反発があったにもかかわらず、国民議会(下院)は「グローバルセキュリティ法案」を可決。採決前、カステックス首相は法案の内容を「非常に優れている」と擁護、第24条についても修正案が加えられたと指摘、「報道の自由」ならびに「表現の自由」は守られると声高に強調。それでも最後には「法案成立の前に憲法院 Conseil constitutionnelの審査を求める」と明言。この時点で逃げ道を作った。

11/26
木曜日朝。警官3人がマスクをしていなかった黒人男性を職場の音楽スタジオ内まで追いかけ、その場で袋叩きにする様子を映したLoopsiderの映像が配信される。

同日、全国ジャーナリスト労組(SNJ)は28日(土)に予定されているデモにて行進が禁止されたことを不服とし、カステックス首相との話し合いをボイコット。その間にも午前中の暴力警官の動画は世間をますます騒がせていくことになる。

同日夜、ダルマナン内相は騒ぎを少しでも鎮める目的で20時のニュースに登場、問題の警官を非難しながらも、立場上警察の役割とグローバルセキュリティ法案を擁護するという苦しい状況に立たされた。

そもそも、伝統的右派政権ならばともかく、マクロンはなぜこのタイミングで第24条のような議論必至の内容を含めた法案を押し通そうとしたのであろうか?10月2日に「イスラム分離主義」と戦うことを明言した直後にイスラムテロ事件を相次いで被り、国権強化・治安強化の気運を捉えたつもりであったのかもしれない。また、ルモンド紙の11月7日付社説にある「警察官の匿名化を求める警察労組に対するクライエンテリズム的な対応」との分析も当てはまるだろう。

が、天秤は逆に傾きつつある。その皿にまたひとつ不徳な動画が加わったことにより、気運の向きも変わり始めているのだろうか。本日付ルモンドの記事がいう「cocktail détonant(起爆剤ミックス)」は 、まさに一触即発。

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