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デモ、その不思議な三角関係

フランスのデモは変わった。

ひと昔前までは、デモ行進はオープンで明るく賑やか、政治色の濃いテーマであっても子連れ参加もよくみられ、高校生や学生のデモもよく行われた。催涙ガスで閉幕を迎える今日のデモとは大違い。

2018年末に始まった「黄色いベスト運動」以来、FDO ( les forces de l’ordre) と総称される警察・治安部隊の存在が急激に目立つようになり、昨日のデモではそれが頂点を極めたように映った。パリではデモ隊5000人に対し警察官3000人。いったい、どっちの行進なんだか…

近年のデモ警備の強化は一部デモ隊の暴力的行動の増加に比例している。いつの頃からか、ブラック・ブロックや les casseurs (壊し屋) と言われる輩が本来のデモ隊にパラサイトして、独自の主張に駆られて行進の最中に暴れる。

ブラック・ブロックのプロフィールはアナーキスト、反資本主義者、超左翼(ultra-gauche)などとされるが実態は掴みづらく、その特徴は 個々で集団に溶け込み機をみてグループ化し即解散する というカメレオン式の活動方法にある。

昨日のパリのデモ(manifestation)の中にも相当数紛れていたはずで、つまり、最近のフランスのデモは「デモ隊ブラック・ブロック警察」の三者乗り合いバスのようなもの。各グループの憎愛の構図も微妙に複雑だ。

  1. デモ隊にとってブラック・ブロックはデモを台無しにする厄介な邪魔者だが、心情的に憎み切れない部分もある。表は無関心を装い、対応は警察任せ。
  2. 警察の使命はデモの安全な進行を保証すること。隊列に潜む不穏分子を見極めつつマニフェスタシオン (意思の表明) を保護するという曲芸技を要求されている。しかし、頑張ってもデモ隊から感謝はされず、常に「やり過ぎ」を非難されるのが常。
  3. 警察とブラック・ブロックは宿命の敵。

この妙な三角関係に、新たな力関係が生まれたのが昨日。

昨日のデモは「警察の暴力問題」で政治的ピンチに立たされているダルマナン内相が名誉挽回を図れる重大な機会。先週のデモでは多くの破壊行為を阻止できず、警察がなめられているだけに。

そこで今回、警備部隊の大量投入となった。行進前から参加者を入念にコントロール。デモ隊をがっちりと囲み一緒に行進することにより不穏な兆候は即鎮圧。警察による職務質問数をダルマナン内相が自ら頻繁にツイート。解散時も機動隊の車列で圧力をかけ退散を迫った。

作戦を変えた結果、大きな混乱は起きずにデモ警備は「成功」。勝ち目のない状況を察し、暴れ者は隠れたままとなった。ダルマナン内相もご満足のツイートを発した。今年7月に任命されたばかりの若く野心的なこの内務大臣は胸をなでおろしたことであろう。

ただ、今回の行進の主な呼びかけ人はNPA党(反資本主義新党)、デモの合言葉は先週に引き続き治安関連法案反対各種自由を制限する措置反対だっただけに、三角関係において警察の株が上がったかどうかは別問題だ。

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