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コロナワクチン:医療関係者たちのためらい Vaccination des soignants

この週末、フランス各都市で政府のワクチン接種への圧力がグッと増した。週末ロックダウンを免れたパリでは100ヶ所余りの「ワクチン接種センター」が開設され、日曜日もフルで稼働する。対象者も75歳以上は全員、基礎疾患を持つ者は50歳から74歳までが接種可能となった。

金曜日から土曜日にかけ、カステックス首相とベラン保健相はワクチン接種を呼び掛けるメッセージを代わる代わるツイート、国民に発破をかけた。基本的に日曜日は稼働日とはならないフランスでは異例ともいえる。

この「焦り」にも似た政府の動向の裏には何があるのだろう?

一つには、感染率が全国的に上がってきているにもかかわらず局地的にしか「週末ロックダウン」を実施しない代わりにワクチンの接種人口を増やして感染に歯止めをかけようという心算。もう一つは、医療関係者の接種率の低さをカバーする意図も見え隠れする。

医師や看護師をはじめ、医療に従事するスタッフには全員、年齢に関係なく2月上旬より優先接種が認められている。ところが、ここ一週間で表面化してきのが、医療関係者がワクチン接種にひどく消極的であるという事実。実際、医療従事者用に取り置かれた英アストラゼネカ・ワクチンの75%が未使用。全体では、高齢者用施設スタッフの4割と医療施設スタッフの3割のみがこれまでにワクチンを受けている。

木曜の晩に政府が行った記者会見の質疑応答でも、記者に「医療スタッフがボイコットしているワクチンを、受けたがっている国民に回そうとはしないんですか?」とつっこまれる有様。国民への接種呼びかけと並行して、ベラン保健大臣が医療関係者に接種を促す手紙を送るなど、政府メンバーはツイッター等で喚起を繰り返した。

また、本日7日付けのJDD紙を通して、医師会や薬剤師会など7つ医療保険関連組織が共同で、メンバー宛に早急な接種を呼びかけている。

では何故、フランスの医療関係者はワクチンを接種したがらないのであろうか?

院内感染も増え続ける中、現場の第一線で働く者たちが接種に躊躇している事態に政府は焦りを、国民は苛立ちを感じてしまうのも無理はない。手紙作戦が功を奏さなければ、政府は医療関係者に対するワクチンの義務化も辞さない構えだ。

これまでヒーロー扱いされてきた医療従事者たちが一気に槍玉に挙がった事態をうけ、全国看護師組合の代表は土曜朝(3/6)のラジオ番組でこう説明した。

ワクチン接種が問題なのではなく、アストラゼネカ・ワクチンが問題だ。保健医療に関わる者にとっては効果が不十分。接種そのものを拒否しているわけではない。

要は、強い副反応も報告され、米ファイザーやモデルナ・ワクチンに比べ当初効果が薄いとされた英アストラゼネカ・ワクチンが不人気なため医療関係者の接種が進んでいないという。

この言い分はあながち馬鹿げていない。実際の効果のほどはさておき、ワクチンに対する優劣のイメージが心理的に固まってきているのは確かな気がする。かたや、新技術のmRNAワクチン(ファイザー、モデルナ)は価格も高く、免疫効果も90%以上と謳われ、目立った副作用も知られていない。もう一方は、従来の製法のアストラゼネカ・ワクチン。廉価で、強い副反応も実際に報告され、数値上の効率もmRNAワクチンには随分劣る。これだけでも「せめて受けるワクチンは選びたい!」という気になるのが人情というものでは。

さらに、欧州で許可された最初のワクチンであるmRNAワクチンについては、セレブの通う病院の理事メンバー元大統領などが優先順位を無視してこっそり受けていた事実も明るみに出ている。このようなことから「アストラゼネカ・ワクチンは大衆用の二流のワクチン、余っているため政府がさばこうと必死」という印象が定着してしまうリスクもある。

とはいえ、医療関係者のワクチン接種率アップを優先に考えた場合、彼らにはmRNAワクチンを使うのも一手かもしれない。と同時に、アストラゼネカ・ワクチンは条件なしに希望者全員に開放する。どのワクチンでも喜んで受けたい人はたくさんいるのだから。現在のように、大量のワクチンが冷蔵庫に眠ったままでは全く埒が明かない。

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